遺言書の取り消し(撤回)はいつでも可能!具体的な方法と注意点
この記事のポイント
- 遺言書は、いつでも自由に内容を変更したり取り消したりできる
- 新しい遺言書を作成すると、古い遺言書と矛盾する部分は取り消されたものとみなされる
- 公正証書遺言や法務局保管の遺言書は、手元の控えを破棄しても取り消しにはならない
- 一部の訂正は厳格なルールがあるため、初めから「書き直す」のが最も安全
遺言書を作成した後、「財産状況が変わった」「受遺者との関係が変化した」などの理由で、遺言の内容を変更・取り消ししたいと考えるケースは少なくありません。
結論から申し上げますと、遺言者は誰の同意を得ることもなく、いつでも自由に遺言を取り消す(撤回する)ことができます。
目次
遺言の取り消し(撤回)に関する法律の規定
民法では、遺言の撤回について以下のように定められています。
民法第1022条(遺言の撤回)
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
法律上の正式な用語は「撤回(てっかい)」ですが、一般的な「取り消し」と同じ意味合いとお考えください。
遺言の「全部」を取り消す方法
遺言書の全部を無効にしたい場合、主に以下の3つの方法があります。
方法1:遺言書を破棄する
ご自身で保管している「自筆証書遺言」や「秘密証書遺言」の場合は、遺言書そのものを破ったり、燃やしたりして破棄することで、遺言を撤回したものとみなされます(民法第1024条)。
【要注意】公正証書遺言の場合
公正証書遺言は、公証役場に原本が保管されています。そのため、手元にある「正本」や「謄本」を破棄しても、遺言を取り消したことにはなりません。必ず新たな遺言書を作成して撤回する必要があります。
方法2:新たな遺言書を作成する
内容が矛盾する新しい遺言書を作成した場合、日付が新しい遺言書が優先され、古い遺言書のうち抵触する部分は取り消されたものとみなされます(民法第1023条)。
方法3:取り消す旨を記載した遺言書を作成する
新しく遺言書を作成し、その中に「令和〇年〇月〇日作成の遺言は全部撤回する」と明確に記載する方法です。新しい財産の分け方はまだ決まっていないが、とりあえず前の遺言は白紙に戻しておきたい場合などに有効です。
遺言の「一部」を訂正・取り消す方法
遺言書の一部だけを変更したい場合は以下の方法がありますが、直接の訂正はルールが複雑なため注意が必要です。
1. 遺言書に直接訂正を加える(非推奨)
自筆証書遺言の場合、直接訂正することが可能ですが、民法第968条3項により厳格な方式が定められています。
- 訂正箇所を二重線で消し、その横に正しい文言を記入する
- 訂正箇所に印鑑(遺言書作成時と同じ印鑑)を押す
- 欄外(余白)に「〇行目〇字削除〇字加入」と記載する
- 欄外の記載部分に署名する
これらのルールを少しでも間違えると訂正は無効となり、元の内容のまま遺言が残るか、最悪の場合は遺言全体が無効になる恐れがあります。
2. 一部を取り消す(変更する)新たな遺言書を作成する
「令和〇年〇月〇日付遺言のうち、第〇条(〇〇の不動産を長男に相続させる)の部分を撤回する」といった内容の新しい遺言書を作成することで、一部を取り消すことができます。
💡 司法書士からのアドバイス
一部の文字の訂正や変更であっても、将来の無効トラブルを防ぐために「初めから新しい遺言書を書き直す(または公正証書遺言を作り直す)」ことを強くお勧めいたします。
遺言書の種類別:取り消し時の注意点まとめ
作成した遺言書の種類によって、物理的な破棄で取り消しができるかどうかが異なります。
| 遺言書の種類 | 手元の遺言書の破棄による取り消し | 備考 |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言 (自分で保管) | 可能 | 遺言書そのものを破棄(シュレッダーや焼却など)すれば、撤回したものとみなされます。 |
| 自筆証書遺言 (法務局で保管) | 不可 | 手元の「保管証」を捨てても無効です。法務局へ出向き「遺言書の保管の撤回」の手続きをするか、新たな遺言書を作成する必要があります。 ※参考:法務省 自筆証書遺言書保管制度 |
| 公正証書遺言 | 不可 | 正本や謄本を捨てても公証役場に原本が保管され続けているため無効です。新たな遺言書(公正証書・自筆どちらでも可)を作成して撤回します。 |
意図せず遺言が取り消し(撤回)とみなされるケース
遺言書自体に直接手を加えていなくても、生前の行動が遺言の内容と矛盾する場合は、その抵触する部分の遺言は撤回したものとみなされます(民法第1023条2項)。
- 「Aの土地を長男に相続させる」と遺言したが、生前にその土地を第三者に売却してしまった。
- 「自宅の建物を次男に遺贈する」と遺言したが、生前にその建物を自ら取り壊した。
このような場合、物理的に財産が存在しないため、長男や次男は該当する財産を受け取ることができません。
遺言書の書き直し・取り消しは専門家にご相談を
遺言書の取り消しや変更は、「新しい日付で正しい方式の遺言書を作成する」のが最も確実で安全な方法です。
しかし、新たに作成した遺言書の方式に不備があると、せっかく書き直した遺言書が無効になってしまい、古い遺言書がそのまま効力を持ってしまうリスクもあります。
確実に遺言の内容をアップデートしたい、古い遺言を完全に無効にしたいとお考えの際は、ご自身の状況(自筆証書か公正証書かなど)に合わせた最適な手続きを提案できる司法書士へ一度ご相談ください。
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この記事を監修した行政書士

P.I.P総合事務所 行政書士事務所
代表
横田 尚三
- 保有資格
行政書士
- 専門分野
「相続」、「遺言」、「成年後見」
- 経歴
P.I.P総合事務所 行政書士事務所の代表を務める。 相続の相談件数約6,000件の経験から相談者の信頼も厚く、他の専門家の司法書士・税理士・公認会計士の事務所と協力している。 また「日本で一番お客様から喜ばれる数の多い総合事務所になる」をビジョンに日々業務に励んでいる。













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