やっかいな相続問題、どう防ぐ?高額費用、遺言が無効や、かえって争い生む危険も

2014/10/07
 来年から相続税が実質的に大幅な増税となる。そのため、相続への注目度は高まっており、書店などでは相続関連本が多く並べられている。
 
 高度経済成長期に一生懸命働き、資産を蓄えた団塊の世代が、今年から来年にかけてほとんど定年退職する。定年を機に、保有する資産を愛する家族に残し、争いが起きないように分け与えたいと考える人は多いだろう。
 
 そこで、自らの終末期をデザインする活動「終活」が活気を帯びている。秘かに遺言書を書いている人も多いようだが、2007年に信託法が新しく施行されたことで、信託も注目を集めるようになった。
 
 今回は、意外と知られていない信託について掘り下げてみたい。
 
●遺言や成年後見制度の不備
 
 相続対策をするには、被相続人の意思能力が必要不可欠だ。認知症になってからでは、遺言書を作成することも、資産を子どもに分配することもできず、当然ながら銀行から借り入れもできないため、不動産を有効活用するようなことも不可能となる。
 
 認知症になったら成年後見制度を利用すればよい、と考える人もいるかもしれないが、成年後見は被後見人の財産を守ることが目的であり、相続対策として資産を活用することは原則としてできない。また、なによりも後見人となる家族などは、定期的に裁判所へ書類を提出しなくてはならないなど、大変な苦労を背負うことになる。
 
 自筆で遺言を作成してみても、厳格な書式が法律で定められているため、一部でも不備があると遺言書全体が無効となることもある。または、その遺言の内容によっては、かえって相続人間に争いが起こることも珍しくない。
 
 そこで、信託を活用することで相続対策を確実に実行できるように備える人が増えているのである。
 
●信託とは
 
 信託とは、資産の所有者(委託者)が第三者(受託者)に財産を託して運用を依頼し、特定の誰か(受益者)にその利益を与える制度である。当然、遺言と同様に委託者自身の意思能力がなければならないため、認知症になってからは利用することはできないが、第三者に運用を委託し、さらに自分の老後や死後の財産活用についても任せられるため、あまり抵抗感を抱くことなく利用する人が多いようだ。
 
 現在の信託法では、個人に委託することもできるため、弁護士や司法書士などが信託を請け負うケースも増えている。そこで、信託銀行などの金融機関に委託する場合と、個人に委託する場合を比べてみよう。
 
 金融機関の信託にかかる費用は、大きく分けて申請時と年間管理費、そして遺言執行時の3種類ある。しかし、金融機関ごとに少しずつ金額は異なっており、申請する前には十分に検討するべきだろう。申請時の費用は30万円台が一般的で、ほとんど差はない。年間管理費も5000円台で、ほぼ横並びだ。大きく違うのは、遺言執行費用だ。財産に応じて1~3%の範囲だが、財産の額が大きくなればなるほど、費用に差がつく。信託銀行では、最低報酬額も108~160万円と幅がある上、地方銀行が80万円台なのに比べて高額だ。諸費用を含めると、少なくとも200万円はかかると考えたほうがいいだろう。10億円ほど資産がある場合は総額800~1000万円ほどになるため、十分に検討するべきだ。
 
●銀行以外の信託費用
 
 これに比べて、弁護士や司法書士の遺言執行報酬は格安だ。銀行などの大手企業と異なり、将来にわたって安心・安全かといえば疑問はあるが、銀行に多額の報酬を払いたくない場合には、一考の価値はあるだろう。
 
 弁護士の報酬額は自由化されているため事務所ごとに差が大きいが、20万円台から受任している弁護士もいる。加えて、財産に応じて相続財産の1~3%を加算するのが一般的だ。また、司法書士は総額30万円から相続財産の1%程度の事務所が多いといわれている。
 
 大手の信託銀行は、担当者が数年ごとに異動するなど深い信頼関係を継続できないことや、相続人が遺言に納得できない場合に、執行を依頼せずに相続人間で遺産分割協議をしても規程通りの執行報酬を要求されることが多いため、十分に検討する必要がある。
 
 メリットとデメリットをまとめると次のようになる。
 
・銀行…費用が高額。将来にわたって安心して資産を預けられる。信頼関係を構築するのが難しい場合もある。
 
・弁護士…報酬はバラつきがある。相続人間に争いが生じた時に、速やかに対応してもらえる。
 
・司法書士…費用が安い。訴訟対応に慣れている事務所と、まったくできない事務所がある。
 
・税理士、行政書士など…報酬に差がある。訴訟対応はできない。
 
 遺言書の作成や信託の制度など、上手に資産を家族に残すことで“争続”を避ける方法を元気なうちに検討しておくことが、一家の大黒柱には重要だ。
(文=久保正昭/弁護士・CFP)

記事引用元(http://biz-journal.jp/2014/09/post_6080.html)

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