ファミリー企業の相続は隠れた保証債務に注意!

2014/06/26
連帯保証人の相続人は借金を完済するまで保証債務を負う
 
ファミリー企業の社長さんは、その社会的信用により、人からいろいろな頼まれ事をします。例えば、就職の身元保証人、アパート・マンションの借家契約や借金の連帯保証人などです。
 
しかし、これらの保証契約は大概、社長さんの一存でするので、家族も知らない場合が少なくありません。相続の際、この隠れた保証債務の有無を調べずに後継社長を決めたり、遺産分割協議をまとめてしまうと、後々問題が生じます。
 
金融庁が2014年2月に調査した「中小企業の業況に関するアンケート調査」によると、中小企業の資金繰りは、改善したとはいえ、D.I.(業況判断指数)は現況、先行きとも「悪い」と答えた企業の数がまだ多いようです。
 
また、同庁は「経営者保証に関するガイドライン」で、各金融機関に経営者保証に依存しない融資に取り組むよう求めていますが、中小企業向けの貸出は不動産業を除けば低迷しています。
 
その原因は、設備投資など企業の資金需要が少ないこともありますが、やはり金融機関の融資態度や融資条件が、ガイドラインが目指す「借りやすさ」にはまだほど遠いからだと思います。そのため、社長さんの中には金融機関から融資を受ける知人に頼まれ、借金の連帯保証人になる人もいるのです。
 
この保証債務は、社長さんが亡くなると、マイナスの遺産として相続人が引き継ぎます。しかし、相続人の大半は債務者が返済を滞り、債権者から督促されて初めて、その事実に気付くのが普通でしょう。
 
相続開始を知った時から3か月(熟慮期間という)が経過していると、保証債務が遺産より多くても、原則もう相続放棄はできません(民法915条1項)。
 
就職の身元保証人の地位は相続しない
 
熟慮期間中に隠れた保証債務があることが分かれば、相続人は適切な対策が取れます。債権者からの督促額が遺産を上回るような場合、相続放棄や限定承認を選ぶこともできるからです。
 
また、後継社長としては、新設分割などの手続きを利用し、事前に優良資産を新会社に移し替えるなどの防衛策を講じておくこともできるでしょう(会社法762条以下)。被相続人が、会社名義や取締役として連帯保証している場合もあるからです。
 
次に、借家契約の連帯保証人ですが、借家人が家賃を滞納したり、部屋を壊すなど大家に損害を与えた場合、その損害額を借家人の代わりに弁償しなければなりません。しかも、通常は契約更新後も、引き続きその保証債務を負うことになっています。
 
また、相続人もその地位を相続するというのが通説および判例の考え方です。熟慮期間が過ぎると、借金の連帯保証人と同様、相続放棄はできません。
 
もっとも、借家人との関係が希薄なら、相続人は大家に保証契約の解除を申し出ることも可能です。
 
他に連帯保証人になってくれる人がいれば、大家は契約解除に応じてくれるでしょう。ただし、大家が解除に応じないときや大家から滞納家賃などを請求された場合、相続人は保証契約の解除を諦めたり、大家に言われるまま損害額を払う必要はありません。
 
必ず弁護士に相談し、大家との交渉をしてもらうといいでしょう。意外に減額や免責になる場合も少なくないのです。
 
なお、身元保証契約は一身専属の債務ですから、保証人である被相続人が亡くなれば、身元保証契約は終了します。
 
相続開始後、被相続人が身元保証した人がその雇主に損害を与えても、相続人は保証債務を負う責任はありません(被相続人の生前に起きた不祥事については、相続人が保証債務を相続し、雇主の損害を弁済しなければならない)。
 
また、身元保証契約に関しては「身元保証に関する法律」により、保証人は通常5年間しか責任を負いません(更新は可能だが、条件は厳しい)。
 
就職後10年以上経ってからの不祥事で、身元保証人やその相続人に保証債務を負うよう求めてくる雇主もいますが、雇主から更新の通知などをもらっていない限り、相続人はその損害を弁償する義務はないのです。
 
他人の借金や借家契約の連帯保証人、就職の身元保証人になっている社長さんは、相続人となる後継社長や家族に、その事実を話しておくといいでしょう。
 
相続人はその事実を知っていれば、相続前から、相続するか放棄するかを考えておくことができるからです。特に、会社を引き継ぐ相続人は、事前に新設分割をするなど予防策が立てられます。
 
ただし、債権者側の新設分割による資産移転取消し要求を認めた判例もあり(最高裁平成24年10月2日判決)、弁護士と相談しながら予防策を講じるといいでしょう。

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